2026年版・3-12

判例に見る区分所有法の実務の一問一答

マンション管理士「法令及び実務3」から、判例に見る区分所有法の実務に関する4択問題を10問。「答えと解説を見る」を開くと、正解とその理由がその場で読めます。会員登録は不要です。

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問題

上から順に解いてみてください。答えは各問の下で確認できます。

問13-12

管理費及び修繕積立金の請求権の消滅時効に関する次の記述のうち、判例の趣旨によれば、正しいものはどれか。

  • ①管理費の請求権は、一般の債権として10年の時効により消滅するとされている
  • ②管理費の請求権は、定期給付債権に当たり5年の時効により消滅するとされる
  • ③管理費の請求権については、およそ消滅時効の適用がないものとされている
  • ④管理費の請求権は、2年の短期消滅時効によって消滅するものとされている
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正解 ②管理費の請求権は、定期給付債権に当たり5年の時効により消滅するとされる
解説
最高裁判所は平成16年4月23日の判決において、管理費等の債権は、管理規約の規定に基づいて区分所有者に対して発生し、その具体的な額が集会の決議によって確定して月ごとに支払われるものであることから、基本権たる定期金債権から派生する支分権として、年又はこれより短い時期によって定めた金銭の給付を目的とする債権に当たり、5年の短期消滅時効に服すると判示した。債権法改正後は、民法166条1項1号により権利を行使することができることを知った時から5年で時効消滅することとなり、結論は変わらない。

他の選択肢が不適切な理由
管理費の請求権は毎月発生する定期的な金銭債権であるから、一般の債権として10年とする内容は判例の考え方と異なる。私法上の債権である以上、消滅時効の適用がないとする内容も誤りである。2年の短期消滅時効は債権法改正前の職業別の短期時効に関するもので、管理費には当てはまらない。
問23-12

駐車場の専用使用権が設定されている場合において、その使用料を増額する規約の設定又は変更に関する次の記述のうち、判例の趣旨によれば、正しいものはどれか。

  • ①専用使用権者の承諾がなければ、いかなる場合も使用料を増額することができない
  • ②管理組合は、増額後の額の相当性を問わず自由に使用料を増額してよい
  • ③使用料の増額は、常に専用使用権者に特別の影響を及ぼすことになる
  • ④必要性・合理性があり相当な額であれば、承諾を得ずに増額することができる
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正解 ④必要性・合理性があり相当な額であれば、承諾を得ずに増額することができる
解説
最高裁判所は平成10年10月30日の判決において、駐車場の使用料を増額する規約の設定又は変更等は、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が社会通念上相当な額であると認められる場合には、専用使用権者に特別の影響を及ぼすものではないとして、その承諾を得ずに法所定の手続に従って増額することができると判示した。専用使用権者と他の区分所有者との負担の公平を図る趣旨である。

他の選択肢が不適切な理由
判例は一定の要件の下で承諾なしの増額を認めているから、いかなる場合も増額できないとする内容は誤りである。他方で、増額の必要性・合理性と額の相当性が要件とされている以上、額の相当性を問わず自由に増額できるとする内容も正しくない。増額が常に特別の影響を及ぼす場合に当たるわけでもない。
問33-12

区分所有法31条1項後段にいう「特別の影響を及ぼすべきとき」の判断に関する次の記述のうち、判例の趣旨によれば、正しいものはどれか。

  • ①規約の変更の必要性・合理性と受ける不利益とを比較衡量して判断される
  • ②一部の区分所有者に不利益が生ずれば、常にこれに当たるとされる
  • ③規約の変更に反対した区分所有者が存在すれば、当然にこれに当たる
  • ④区分所有者の全員が同意していない限り、常にこれに当たるものとされている
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正解 ①規約の変更の必要性・合理性と受ける不利益とを比較衡量して判断される
解説
最高裁判所は、区分所有法31条1項後段にいう規約の設定・変更等が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときとは、規約の設定・変更等の必要性及び合理性と、これによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうと判示している。承諾を要するかどうかは、この比較衡量によって個別に判断される。

他の選択肢が不適切な理由
何らかの不利益が生じれば常に該当するとすると、規約の変更が事実上不可能となり、多数決による規約の設定・変更を認めた制度の趣旨が失われる。反対者が存在することや全員が同意していないことは、いずれも特別の影響の有無とは別の事柄であり、これらをもって当然に該当するとすることはできない。
問43-12

理事を組合員のうちから総会で選任し、理事の互選により理事長を選任する旨の規約を有する管理組合に関する次の記述のうち、判例の趣旨によれば、正しいものはどれか。

  • ①理事長を解職するには、必ず総会の決議を経なければならない
  • ②理事長の解職についての定めがない以上、解職はおよそ認められない
  • ③規約に明文の定めがなくても、理事の過半数の一致で理事長を解職できる
  • ④理事長の解職には、規約の変更の手続を経る必要があるものとされている
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正解 ③規約に明文の定めがなくても、理事の過半数の一致で理事長を解職できる
解説
最高裁判所は平成29年12月18日の判決において、理事を組合員のうちから総会で選任し、その互選により理事長を選任する旨を定めた規約を有する管理組合について、規約に理事長の解職に関する明文の定めがなくても、理事の過半数の一致により理事長の職を解くことができると判示した。互選によって理事長を選ぶ権限が理事会にある以上、その職を解く権限も理事会に属すると解されるからである。

他の選択肢が不適切な理由
理事長の地位は理事の互選によって与えられたものであるから、その解職に常に総会の決議を要するとする内容は判例の考え方と異なる。明文の定めがないことをもって解職が一切できないとすると、不適任な理事長を交代させる手段がなくなり不合理である。解職は規約の内容を変更するものではないから、規約変更の手続も必要ない。
問53-12

滞納管理費と専有部分の譲受人に関する次の記述のうち、区分所有法の規定及び判例の趣旨によれば、正しいものはどれか。

  • ①譲受人は、滞納の事実を知らなかった場合には債務を承継しない
  • ②譲受人は特定承継人として、前の区分所有者の滞納管理費の債務を負担する
  • ③譲受人が債務を負うのは、譲渡人がその債務を免れる場合に限られる
  • ④譲受人に請求することができるのは、譲渡の直前1年分の管理費に限られる
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正解 ②譲受人は特定承継人として、前の区分所有者の滞納管理費の債務を負担する
解説
区分所有法8条は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができると定めている。売買による譲受人や競売による買受人はこの特定承継人に当たり、前の区分所有者が滞納していた管理費等の債務を負担する。管理組合の財政基盤を保護し、共用部分の管理を安定させるための規定である。

他の選択肢が不適切な理由
8条は譲受人の主観的事情を要件としていないから、滞納の事実を知らなかったことを理由に責任を免れることはできない。この規定は前の区分所有者の債務を免責するものではなく、譲受人と併存的に責任を負わせるものである。また、請求できる範囲を直前1年分に限る旨の規定も存在しない。
問63-12

専有部分を賃借している者に対する管理費の請求に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  • ①賃借人は占有者であるから、当然に管理費の支払義務を負うものとされている
  • ②賃借人は、区分所有者と連帯して管理費の支払義務を負うとされる
  • ③賃借人が管理費を支払わないときは、区分所有者は責任を免れることになる
  • ④管理費の支払義務を負うのは区分所有者であり、賃借人はこれを負わない
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正解 ④管理費の支払義務を負うのは区分所有者であり、賃借人はこれを負わない
解説
管理費及び修繕積立金の支払義務は、規約及び集会の決議に基づいて区分所有者に生ずる債務であり、その債務者は区分所有者である。賃借人は区分所有法46条2項により建物等の使用方法について区分所有者と同一の義務を負うが、これは使用方法に関する義務にとどまるから、管理組合が賃借人に直接管理費の支払を請求することはできない。管理組合は賃貸人である区分所有者に対して請求し、必要に応じて賃料債権の差押え等の方法によることになる。

他の選択肢が不適切な理由
占有者であることから当然に支払義務が生ずるわけではなく、連帯債務者となる根拠もない。また、管理費の債務者は区分所有者であるから、賃借人が支払わないことを理由に区分所有者が責任を免れることもない。
問73-12

集会の決議に手続上又は内容上の瑕疵がある場合に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  • ①区分所有法には決議取消しの訴えの制度がなく、一般の民事訴訟で争われる
  • ②区分所有法は、決議の日から3か月以内に決議取消しの訴えを提起できると定める
  • ③決議に瑕疵があっても、集会の決議である以上これを争うことはできない
  • ④決議の効力を争うためには、必ず管理組合の同意が必要とされている
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正解 ①区分所有法には決議取消しの訴えの制度がなく、一般の民事訴訟で争われる
解説
会社法が株主総会について決議取消しの訴えという特別の訴訟類型と提訴期間を定めているのに対し、区分所有法には集会の決議の取消しに関する規定が置かれていない。そのため、集会の決議に招集手続の瑕疵や決議内容の違法がある場合には、決議無効確認の訴えや決議不存在確認の訴えといった一般の民事訴訟によってその効力を争うことになる。提訴期間の制限もないが、権利の濫用に当たる場合には主張が制限されることがある。

他の選択肢が不適切な理由
区分所有法に決議取消しの訴えや3か月の提訴期間を定めた規定はない。瑕疵のある決議の効力を争う手段は民事訴訟として認められているから、争うことができないとする内容も誤りである。訴えの提起に管理組合の同意を要するという法的根拠も存在しない。
問83-12

規約及び集会の決議の効力に関する次のア〜エの記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものの組合せはどれか。 ア 規約及び集会の決議は、区分所有者の特定承継人に対しても効力を生ずる。 イ 集会の決議は、その決議に賛成した区分所有者のみを拘束する。 ウ 占有者は、建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき、区分所有者が規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う。 エ 占有者は、規約に定められた事項について一切の義務を負わない。

  • ①アとイ
  • ②アとウ
  • ③イとエ
  • ④ウとエ
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正解 ③イとエ
解説
誤っている記述はイとエである。イについて、集会の決議は区分所有者の団体としての意思決定であるから、決議に反対した者や集会を欠席した者を含む区分所有者全員を拘束する。エについて、区分所有法46条2項は、占有者が建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき区分所有者と同一の義務を負うと定めているから、規約上の義務を一切負わないということはない。

正しい記述の理由
アは46条1項のとおりで、規約及び集会の決議は区分所有者の特定承継人に対しても効力を生ずる。ウも46条2項のとおりであり、賃借人もペットの飼育制限や用途の制限のような使用方法に関する規約上の義務に服する。もっともこの義務は使用方法に関するものに限られ、管理費の支払義務のような金銭債務までは及ばない。
問93-12

区分所有者の共同の利益に反する行為に該当するかどうかの判断に関する次の記述のうち、裁判例の一般的な考え方として最も適切なものはどれか。

  • ①管理規約に明文で禁止されている行為に限り、これに該当するものとされる
  • ②行為の必要性と他の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量して判断される
  • ③他の区分所有者が不快に感じた行為は、すべてこれに該当することになる
  • ④専有部分の内部でされた行為は、これに該当することがないものとされる
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正解 ②行為の必要性と他の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量して判断される
解説
裁判例は、区分所有法6条1項の共同の利益に反する行為に当たるかどうかについて、当該行為の必要性の程度、それによって他の区分所有者が被る不利益の態様と程度、建物の構造や使用状況といった区分所有関係の実態などを総合的に比較衡量して判断している。著しい騒音や悪臭の発生、用途違反の使用、構造耐力上主要な部分の無断改変などが典型例として問題となる。

他の選択肢が不適切な理由
6条1項は規約による禁止の有無を要件としていないから、明文で禁止された行為に限られるとする内容は誤りである。主観的な不快感のみで該当性を認めると、区分所有者の権利行使が過度に制約される。また、専有部分の内部での行為であっても、他の区分所有者に重大な影響を及ぼすものは該当し得る。
問103-12

区分所有法に関する次のア〜エの記述のうち、判例の趣旨に照らして誤っているものの組合せはどれか。 ア 管理費及び修繕積立金の請求権は、5年の消滅時効にかかる。 イ 駐車場の専用使用料を増額する規約の設定又は変更は、常に専用使用権者に特別の影響を及ぼすものであり、その承諾がなければ効力を生じない。 ウ 理事の互選により選任された理事長は、規約に明文の定めがなくても理事の過半数の一致により解職することができる。 エ 専有部分の譲受人は、滞納の事実を知らなかったときは、前の区分所有者の滞納管理費の債務を承継しない。

  • ①アとイ
  • ②アとウ
  • ③イとエ
  • ④ウとエ
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正解 ③イとエ
解説
誤っているものはイとエである。イについて、最高裁判所は、増額の必要性及び合理性が認められ、増額後の額が社会通念上相当であると認められる場合には特別の影響を及ぼすものではないとして、専用使用権者の承諾を得ずに増額できると判示しており、常に承諾を要するわけではない。エについて、区分所有法8条は特定承継人の主観的事情を要件としていないから、滞納の事実を知らなかったことを理由に責任を免れることはできない。

正しい記述の理由
アは、管理費等の債権が定期給付債権に当たり5年の短期消滅時効に服するとした最高裁判所平成16年4月23日判決の趣旨に沿うものである。ウは、理事の互選により選任された理事長について理事の過半数の一致により解職することができるとした最高裁判所平成29年12月18日判決の趣旨に沿うものである。

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